大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和62(あ)101 決定

主 文

本件各上告を棄却する。

理 由

弁護人石島泰の上告趣意は、憲法三一条違反をいう点を含め、その実質は単なる

法令違反、事実誤認の主張であって、刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。

なお、所論にかんがみ、被告人Aに対する所得税法違反の事実につき職権で判断

する。

原判決によれば、同被告人の所得のうち山林の伐採、譲渡によるものは事業所得

に該当するというのであるが、右所得金額の計算に当たっては、所得税法三七条二

項に従い、譲渡した山林の植林費、取得費、管理費、伐採費その他その山林の育成

又は譲渡に要した費用の額を必要経費に算入する必要がある。本件においては、逋

脱所得金額の認定方法としていわゆる財産増減法が用いられているところ、右方法

による場合には、山林を期首・期末の資産から除いたうえ、当該年中に譲渡された

山林に関して前年までに支出された経費につき、期首資産の増加による調整を加え、

当該年中には譲渡されなかった山林に関して同年中に支出された経費につき、期末

資産の増加による調整を加えるなどして、右必要経費を控除した所得金額を算定し

なければならない。ところが、原判決は、右のような調整の必要性を考慮すること

なく、右必要経費の算定方法は期末における残存立木のたな卸資産としての評価方

法と同一に帰着する旨判示し、右のような調整をせずに逋脱所得の金額を認定した

第一審判決を結論において是認しているのであるから、原判決は所得税法三七条二

項の解釈を誤ったものといわなければならない。

しかしながら、記録によれば、同被告人は営林署等から立木を買い入れて伐採し、

原木として譲渡することを主たる事業内容としており、調整を要する必要経費の大

部分を取得費、伐採費及び運搬費が占めていたものと認められるところ、本件で用

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いられた資産評価の方法によると、当該年中に譲渡された山林に関して前年までに

支出された費用のうち、期首に存在した立木の取得費及び期首に山元など土場以外

の場所に存在した原木の取得費は、いずれもその費用とほぼ同額の価値を有する右

立木及び原木として期首資産に含めて評価されており、また、期首に土場に保管さ

れていた原木の取得費、伐採費及び運搬費も、それらの費用に見合う価値を有する

右原木として期首資産に含めて評価されているから、期首資産の増加によって調整

したのとほぼ同一の結果をもたらすことになる。これと同様の理由により、当該年

中には譲渡されなかった山林に関して同年中に支出された費用のうち、期末に存在

した立木の取得費、期末に土場以外の場所に存在した原木の取得費並びに期末に土

場に保管されていた原木の取得費、伐採費及び運搬費も、期末資産の増加によって

調整したのとほぼ同一の結果をもたらすことになる。もっとも、土場に保管されて

いた原木の評価額は、その取得費、伐採費及び運搬費のみでなく、利潤の一部を含

んでいる可能性があるものの、記録によれば、期末の土場の在庫量は各年とも期首

の土場の在庫量より大幅に減少しており、右利潤による期首資産の評価の増加分よ

り期末資産の評価の増加分の方が少なく、所得金額の減少をもたらす方向に作用し

ているものと認められるから、同被告人に不利益を及ぼすものではない。そこで、

本件において調整を要する費用として残るものは、期首に土場以外の場所に存在し

た原木と期末に土場以外の場所に存在した原木の各伐採費及び運搬費ということに

なるところ、記録によれば、右のような原木は極めて少ないうえ、期首資産の増加

によって調整すべき右各費用と期末資産の増加によって調整すべき右各費用の差は

僅かなものと認められる。したがって、以上の各費用につき厳密な調整をすること

なく逋脱所得金額を認定したとしても、この違法をもって原判決を破棄しなければ

著しく正義に反するものとは認められない。

よって、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、

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主文のとおり決定する。

平成二年三月三〇日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 安 岡 滿 彦

裁判官 坂 上 壽 夫

裁判官 貞 家 克 己

裁判官 園 部 逸 夫

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